先住民の住むバーモントに初めてやってきたのがフランス人探検家。「バーモント」とは、フランス語で「緑の山」を意味する。その名の通り、北をカナダに接する自然豊かなこの地域は、全米最大のメープルシロップの産地であると共に、フランスからの影響を受けた「シードル」の産地としても有名。そんなバーモント州で最も人口の少ない小さな街がバージェンズである。
17世紀、北米におけるフランス植民地を「ヌーベルフランス」と呼ぶが、バーモント州もその一部として支配された。その当時たくさんの移民がリンゴの種を持参したが、タネが放置されたり育てられなかったり、といった理由により、現在も実をつけても手をかけられることのないリンゴたち“Lost Apple”(忘れられたリンゴ)が存在する。Shacksburyは、その忘れられたリンゴたちを復活させるという任務とともに2013年に創立。毎年秋になると名の知れぬ小さな果樹園や大自然の中でそんな“Lost Apple”を探し、サイダーに使用するリンゴ果樹園として復活させるという、 “Lost Apple Project” に熱心に取り組んでいる。
Shacksburyという名は、そんなもともと初期の移民たちがサイダーを造っていた歴史があるものの今は忘れ去られていた地域のひとつに由来。Shackburyはそんなアメリカでのサイダーの歴史、伝統的なサイダー造りに敬意を払いながらも、現代のサイダー愛好家たちのために斬新発想のサイダー造りも行う。さらに様々なコラボレーションの取り組みでもよく知られている。直近では、Modern Times(サンディエゴのクラフトブリュワリー)、Momofuku(ニューヨーク拠点のレストランチェーン)、Threes Brewing(NYブルックリンのクラフトブリュワリー)ともコラボレーションしている。
製法技術として、アメリカ初のPét-nat(注) Ciderを造った事でも話題。
さらに、看板商品であるDryがサイダー業界として大きな賞でもあるGood Food Awardを受賞(2015年)し、これからの成長や商品展開が業界の中でも大きく注目されている。
注)Pétillant Naturel(ペティヤン・ナチュレル)の略語でスパークリングワインを造る方法の一つ。シャンパンは完全に発酵されたベースワインが酵母と糖でボトル内二次発酵となるのに対し、Pét-Natは、一次発酵の途中でボトル詰めされ、ボトル内ワインに残った糖から発生した二酸化炭素により自然な発泡感が生み出される技法。ボトル個体差の濁りや味の個体差も楽しみの一つ。16世紀から続く伝統的な方法。